③ 東京の地下鉄との相違点
次に東京の地下鉄とは異なる点を観ていきましょう。
まず、運行時刻表についてですが、各路線の始発と最終電車の発車時刻を除いて利用者向けの運行時刻表は公表されていませんが、主要な路線では、電車は最短で1分30秒間隔で運転されており、駅で長時間待たされることはありません。
※ 2021年2月追記:モスクワの地下鉄の全ての駅の始発、終発時刻は、モスクワ市地下鉄公社のオフィシャルサイトから確認できます。(↓)
また、各駅の乗降ホーム上には乗車位置の表示はなく、電車の到着や発車を知らせるアナウンスもありません。常に案内アナウンスが流れ、発車を知らせるブザーが鳴り響く日本の駅とは異なり、ホームはとても静かです。(↓)
ホーム上に乗車位置の表示はありません。
乗客はホーム上の好きな場所で待ち、列車が到着すると最寄りのドアから素早く乗り込むイメージです。列車は高頻度で運行されており、乗降ドアも多数(最大で列車1編成に4カ所×8両=32カ所)あるので、実用上、時刻表や乗車位置の表示は必要ないということなのでしょう。
発車の際、ドアが閉まることを知らせるアナウンスが流れるのは車内だけで、ホーム側には流れません。しかも、扉は激しい勢いで閉じるので、挟まれるとかなり痛い思いをすることになると思われます。このためか、駆け込み乗車をする乗客はほとんど見かけません。次の電車を待てばよいということなのでしょう。
※ 2017年10月追記:ラッシュ時間帯の駅の混雑
上の3枚の写真ではホーム上に乗客の姿がほとんど見えませんが、これらの写真はいずれもロシアの大型連休中の午前中、電車の発車直後に撮影したためで、平日のラッシュ時には非常に混雑します。(↓)
ラッシュ時間帯の⑤号線 キエフスカヤ駅 ホーム
④ 車内のアナウンスと駅の案内表示板
現在、ほとんどの路線がワンマン運転となっています。車内に掲示されている路線図には英語も併記されていますが、車内の案内アナウンス(録音)はロシア語のみです。
アナウンスは路線によって男性の声、女性の声、だみ声のおじさんバージョンなどいろいろです。(笑)
車内のアナウンスは次のような内容でした。(↓)
ご注意ください! → 「アスタロージュナ!」
扉が閉まります! → 「ドゥヴェーリ ザクリヴァーユッツァ!」
自身の安全のため、このフレーズだけでも覚えておくといいと思います。(笑)
※2017年3月5日追記:
先月(2017年2月)、モスクワで地下鉄⑦号線の電車に乗車したところ、発車の際の上記のアナウンスの後に、"The next station is ○○○○○."と英語のアナウンスが追加されていました。地下鉄の車内で英語のアナウンスに遭遇したのは、初めての経験です。
※ 2020年追記
前回地下鉄に乗車した時に気づいたのですが、席を譲る対象に「妊娠中の女性」が加わっていました。(↓) 車内アナウンスは、
・Уступайте места инвалидам, пожилым людям, пассажирам с детьми и беременным женщинам.
となっていました。
駅のホームやコンコースにある案内表示ボードもほとんどがロシア語表記だけなので、モスクワの地下鉄を利用する時には、ロシア語のアルファベットだけでも読めるようにしておくと何かと便利で安心です。(↓)
《ВЫХОД В ГОРОД》(ヴィハト・ブ・ゴーラト)は、「街への出口」の意味。これは各駅に必ずある表示。「入口」は《ВХОД》(フホート)、
「乗り換え(連絡)通路」は《ПЕРЕХОД》(ピリホート)です。
《К》(ク)、《В》(ヴ)、 《НА》(ナ)は方向(~への)を表す前置詞です。
左側:パベレーツ広場、ノヴォクズネツカヤ通りへ 他
右側:パベレーツ駅、ドモジェドヴォ行きアエロエクスプレスへ
左側:赤の広場、革命広場、マネージ広場へ、トベルスカヤ通り、マホーヴァヤ通りへ、ナショナルホテル、中央電信局、グム百貨店へ 他
右側:劇場広場へ、アホートヌィ・リャト通りへ、ソユーズの家、ツム百貨店へ 他
下(緑):②号線チアトラーリナヤ(劇場)駅への連絡通路
左側:マホーヴァヤ通りへ、⑨号線バラビーツカヤ駅へ
右側:アルバート通り、新アルバート通りへ、①号線レーニン図書館駅、④号線アレクサンドロフスキー庭園駅へ 他
案内板の表示を日本語に置き換えてみました。(↑)
案内板を見るときに、覚えておくと便利なロシア語をいくつか例示すると・・・・、
《СТАНЦИЯ》(スタンツィア)駅
《УЛИЦА》(ウーリッツァ)通り
《ПРОЩАДЬ》(プローシシャチ)広場
上記3語はいずれも女性名詞です。どの前置詞に付くかによって語尾が変化(格変化)するので注意が必要です。
一方、以下の各単語は男性名詞です。
《ГОРОД》(ゴーラト)街
《ВХОД》(フホート)入口
《ВЫХОД》(ヴィハト)出口
《ПЕРЕХОД》(ピリホート)連絡通路
《ВАКЗАЛ》(バグザール)ターミナル駅
《ДОМ》(ドム)家・館
※ 2019年1月追記 :駅の案内表示が全面リニューアル
地下鉄駅の案内表示が全面的にリニューアルされました。ほとんどの駅の案内表示が新しいデザインに統一され、英語表記が併記されるようになりました。(↓)
斬新なデザインに一新され、英語表記が併記されるようになった駅の案内表示
⑤ ロシア語の駅名について
同じ駅名なのに、鉄道のターミナル駅はベラルースキー駅、パベレーツキー駅、一方、地下鉄の駅はベラルースカヤ駅、パベレーツカヤ駅などのように、駅名の語尾が違っています。ロシア語では、修飾される名詞の性によって、修飾する形容詞などの語尾が変化します。
地下鉄の「駅」はロシア語で станция (スタンツィア:女性名詞)です。一方、鉄道の「ターミナル駅」はロシア語で вокзал(バグザール:男性名詞)といいます。このとき、女性名詞を修飾するときの形容詞の語尾は「カヤ」、男性名詞を修飾するときの語尾は「キー」となります。
なので・・・、
地下鉄のベラルーシ駅は станция Белорусская (スタンツィア・ベラルースカヤ)、鉄道のターミナル・ベラルーシ駅は Белорусский вокзал (ベラルースキー・バグザール)となります。
モスクワの地下鉄の駅名に、~カヤとか、~アヤなどの語尾が多いのはこのためです。
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