モスクワ音楽院 留学情報

モスクワ音楽院での学生生活をイメージできるよう、ブログ形式にまとめてみました。私自身は、音楽は素人なので、主にモスクワでの日常生活や音楽院・学生寮の様子、入学手続きや日本との往復などの話題を中心に、父親の目線で紹介していきます。モスクワの今をできるだけ実感していただけるように、写真もたくさん掲載するようにしたいと思います。モスクワ音楽院留学を考えている本人やご両親にとって、少しでも参考になればうれしく思います。

音楽院でガスマスク?

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今回は、モスクワ音楽院本科(大学)で履修する科目の中から、音楽や美術など芸術系以外の科目についての話題です。

 

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上の表は、モスクワ音楽院のオフィシャルサイトに掲載されている、2015-2016年後期の本科(大学・外国人コース)ピアノ学科の1学年と2学年の週間時間割(月曜~土曜)です。

下線部③“Физкультура”(フィスクリトゥーラ)は体育です。体育は、多くの日本の大学でも1~2年次に履修しますね。

下線部①“Безопасность жизнедеятельности”(ビザパースナスチ ジズニジャーチリナスチ)は、ロシア特有の科目です。ここでは仮に「生命安全活動(健康と安全)」と訳しておきます。

下線部②“Музыкальная информатика”(ムズィカーリナヤ インフォールマチカ)は、音楽についての情報処理です。パソコンを用いた広報媒体の作成法や情報処理の方法などを学びます。

 

この他、時間割の空白の部分にも、師事している先生のレッスン(2回/週)やロシア語(90分×2回/週)、伴奏法や室内楽のレッスンなどがあり、なかなかの過密スケジュールです。

 

 ここでは、「生命安全活動(健康と安全)」について見てみましょう。

Безопасность жизнедеятельности 生命安全活動(健康と安全)

なんとも不思議なタイトルですが、Википедия (Wikipediaのロシア語版)の解説を翻訳ソフト(google翻訳)にかけて、表示された日本語の文章を修文してみました。この科目は、次のように説明されています。

 

 「生命安全活動(健康と安全)」とは、ヒトと環境の相互作用の中で傷害を予防し快適さを希求する科学であり、事故や自然災害、敵の兵器などによる被害から、国民や経済を守るために行われる公共的、社会的な防衛システムの一部である。

この科学の目的は、ヒトによって引き起こされる緊急事態のリスクを減らすことでもある。

 

分かりやすく言い換えると、「事故や自然災害、テロ(戦争を含む)などから身を守り、快適な生活を送るために身につけておくべき基礎知識」といったイメージかと思います。

ネットで調べてみると、ロシアでは、初等教育の段階から大学の教育課程に至るまで、この科目が必修となっており、様々な教科書が出版されているようです。(↓) 

 

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7年生(中学1年生)の教科書

 

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9年生(中学3年生)の教科書

 

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11年生(高校2・3年生)の教科書

 

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 5年生(小学5年生)の教科書

 

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 8年生(中学2年生)の教科書

 

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9年生(中学3年生)の教科書 

 

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大学生向けのテキスト
表題から「 ”ОСНОВЫ”  基礎の 」という表現がなくなっています。

 

これらの教科書の表紙を飾るイラストや写真をみると、履修する内容がなんとなく見えてきます。

モスクワ音楽院の時間割(本科・外国人コース)では、1学年で履修することになっています。

【ガスマスクのサイズの計測方法について】

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このページ(↑)は、自分の頭部(顔)にフィットするガスマスクのサイズの測定方法の解説です。


留学中の長女によると、授業の中で、このテキストを参考に、「自分自身の頭部にフィットするガスマスクのサイズ(水平方向と垂直方向)をメジャーで正しく測定する」という 課題が出されたそうです。
まさか、モスクワ音楽院でガスマスクのサイズの測定方法を学ぶとは思いませんでしたが、これもロシアのお国柄なのでしょうか。(笑)

【ロシア語字幕付きの防災対策の動画作成】

 この他、授業の中で、それぞれの学生の自国の防災対策について解説した動画教材(youtubeなどからの引用可)にロシア語の字幕をつけて、動画ディスクを作成して提出するという課題が出されたそうです。

 

この課題に長女が選んだのは、東日本大震災のときに古くからの教訓が活かされたエピソードを紹介した「釜石の奇跡」の動画でした。

以下の画像は、昔から三陸地方に伝わる「津波てんでんこ」の言い伝えに従い、日頃、学校で受けていた訓練どおり、幼い幼児や小学生の手を引いて、自主的に高台へ避難した中学生の避難行動を解説した動画「釜石の奇跡 ~津波からの生還~」と、津波や被災地の画像(youtube などから引用)に、長女がロシア語で字幕を付けたカットからのキャプチャーです。

 

 

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字幕 : 釜石の奇跡 ー津波からの生還ー

東北地方の港町釜石市には、昔から伝わる「津波てんでんこ」と呼ばれる教訓がある。

「大きな地震があったときには、津波が来るから一刻も早く高台に逃げて自分の命を守れ」という意味だ。

 

 

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字幕 : 釜石の奇跡 ー津波からの生還ー

この教訓に基づき、津波からの避難訓練を続けてきた釜石市の小中学校では、東日本大地震がおきた時、約3000人の生徒たちが直ちに高台に避難した。その結果、生徒たちの99・8%が生存することができた。この素晴らしい事実は、「釜石の奇跡」と呼ばれている。

 

 

 

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字幕 : 釜石の奇跡 ー津波からの生還ー

小学校、中学校、両校の生徒あわせて約600人は、間もなく標高約10メートルの高台にあるデイケア施設「ございしょの里」に到着した。この時、背後の崖が崩れそうになっていたため、中学生たちが、より高台への移動を提案。さらに約400メートル離れた標高30メートルの高齢介護施設へ、小学生の手を引きながら避難した。

 

 

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字幕 : 釜石の奇跡 ー津波からの生還ー

生徒たちが避難した直後に、高さ20メートルの津波が釜石を襲い、デイケア施設「ございしょの里」は水没した。「津波てんでんこ」の教訓と、中学生の冷静な状況判断が、多くの命を救う結果につながったのである。

 

 

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字幕: 色のついている部分は、津波が到達すると予想される地域

赤色の部分は、高さ6mの大津波が予想される地域

 

 

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字幕: 「自分の命は自分で守る」という意識、すなわち住民主体の防災意識が大切である。

 

以上、ブログの掲載可能容量の関係で、わずか数カットだけですが、動画のストーリー展開は想像できると思います。

かなり複雑な文章を長女がロシア語に訳しているので、字幕には誤訳があると思われますがご容赦ください。

 

それにしても、モスクワ音楽院でテロや自然災害への備えについて学習することになるとは、まったく想像もしませんでした。

さすがは、ロシアの学校です!(笑)