ー モスクワの春 ー
モスクワ音楽院に留学している娘から、LINE でモスクワの春の様子が送られてきました。 北国の春は、いろいろな花が一斉に開きます。新緑が眩しい5月のモスクワの街の雰囲気は、札幌の5月とよく似ています!
では、クレムリン周辺、ボリショイ劇場前の広場、アルバート通りなどを見ていきましょう!(↓) カメラは i-phone 5S です。
会場のモスクワ コスモスホテルに集まった若者たち
今年で7回目となる 日本文化フェスティバル J-FEST 2016 は、3月6、7日の2日間にわたりモスクワ コスモスホテルで開催されました。主催するのは J-FEST 実行委員会、代表はモスクワの日本大使館、イベントの企画と運営は博報堂ロシアが行っています。
ロシアの若者が日本の文化に直接触れることができるよう、会場には多数の体験ブースが設けられ、訪れた多くの若者たちが、折り紙や切り絵、習字、囲碁などを実際に体験しました。
また、大ホールではカラオケとコスプレのコンテストが行われ、集まったたくさんのコスプレイヤーたちが出来映えを競い合いました。
来場者で埋め尽くされたコスプレイベント会場
グランプリ受賞者には、日本への航空券が贈られました!
日本ではあまり知られていませんが、日本の漫画やアニメ、J-POPなどは、ロシアでも若者たちの関心を集めているのだそうです。モスクワやサンクトペテルブルグ、ノボシビルスクなどの大都市では、日本のアニメを題材にした大規模なコスプレイベントが毎年行われ、たくさんの若者たちが参加しているのだそうです。
今年は、スペシャルゲストとして和太鼓のチームの「舞太鼓あすか組」が招かれ、集まった多くの若者の喝采を浴びたそうです。(↓)
アンコールでは、ロシア国旗を振りながらコサックダンスを披露、会場から大喝采を浴びました。(ASKAの写真は、J-FEST 2016 オフィシャルサイトからの引用です。)
あくまでも個人的な感想ですが、日本人はロシアやロシア文化のことをそれほど詳しくは知らないのに比して、ロシア人は日本や日本文化についてよく知っている人が多いように感じます。
現在、ロシアを訪れる日本人観光客の数は、中国人観光客の十分の一にも及びません。日露関係を一層発展させるためには、日本側がロシアへの関心をもっと深め、交流を促進する必要がありそうです。
モスクワからの帰路、ヘルシンキで成田への乗り継ぎ便まで時間があったので、もう一度入国手続きを済ませて、フィンエア・シティバスでヘルシンキ中央駅まで出てみました。
中央駅バスターミナルに到着したところ。この便は女性のドライバーでした。料金(6.3EUR)は乗車の際にドライバーに直接支払います。
発車時刻まで待機中のバス 写真の右手がバス乗り場になっています。後ろの建物は、往路で宿泊したホリデイ・イン・ヘルシンキ・シティ・センター。ホテルのすぐ目の前がバス乗り場と中央駅なので、大変便利なロケーションです。
※ 2016年に入って空港と中央駅とを結ぶ鉄道が全線開通し、市内へのアクセスはさらに便利になっているそうです。
バスを降りて、中央駅に入ってみました。ここから地下に潜って地下鉄に乗ることもできます。
ヘルシンキ 鉄道中央駅 入口
駅構内の様子
駅構内の様子
ヘルシンキ中央駅ホーム ヘルシンキとフィンランド各地とを結ぶ電車が発着しています。
ロシアのサンクト・ペテルブルグへは、高速列車「アレグロ」が一日4往復運行(片道約3時間半)しています。(↓)
フロントの塗装がオレンジ色の電車が「アレグロ」です。
車体に"ALLEGRO" の文字が見えます。いつか機会があったら、ヘルシンキからアレグロに乗ってサンクトペテルブルグに行ってみたいと思います!
中央駅から、地下鉄を利用して、街の周辺地区まで出かけてみることにしました。
チケットは券売機で購入すると、シングルチケット(購入から1時間以内有効で地下鉄とトラムの乗り換え自由)が2.5 EURです。この他、トラム専用のシングルチケットや一日券などがあります。
エスカレーターで地下深くに降りていきます。
駅構内はTDSのセンターオブジアースの洞窟を彷彿させるデザインです。
スタイリッシュな車両は、フィンランドの著名なデザイナー、アンティ・ヌルニスニエミ氏のデザインだそうです。
さすが、デザインの国フィンランド、遊び心いっぱいのデザインに驚かされます。一見の価値ありです!
地下鉄の駅から地上に出ると、トラムに乗り継げるようになっています。
ヘルシンキ中央駅の隣の カンピ(Kamppi) 駅
ここで、トラム(路面電車)に乗り換えができます。新型車両は乗り場と段差のない低床車両です。
この低床車両はトラムの各路線で見かけました。(↑)
トラムを乗りこなせるようになると、ヘルシンキの街歩きは、きっと楽しくなりそうです!
今回も、モスクワ音楽院留学とは直接関係の無い話題になります。
JALのモスクワ線は、4月から6月までは週4便(月・水・金・日)、7月から10月末までは、今年から一便増便されて週5便(月・水・金・土・日)で運行されます。一方、11月から3月までの冬期間は減便され、週3便での運行に戻ります。このため、冬期間にモスクワに行く場合、曜日の都合が合わない時は、毎日運行のアエロフロートを利用するか、経由便を探さなければなりません。
JALが公表している2017年の運行計画によると、3月26日から6月30日までの期間は、現在よりも2往復増便して、週5便(月・水・金・土・日)の運行に、7月1日から10月28日までの期間は、さらに2往復増便して毎日運行に、10月29日からは、週4便(月・水・金・日)の運行になるそうです。
2016年度(上記)よりも、モスクワとの往復がさらに便利になりますね!
詳しくは、下記をご参照ください。(↓)
JALが公表している2017年の運行計画によると、3月25日から6月30日までの期間は、現在よりも2往復増便して、週5便(月・水・金・土・日)の運行に、7月1日から10月27日までの期間は、さらに2往復増便して毎日運行に、10月28日からは、週4便(月・水・金・日)の運行になるそうです。ほぼ昨年と同じ運航便数になりますね!詳しくは、下記をご参照ください。(↓)
日本からモスクワまでのルートは、仁川経由、北京経由、フランクフルト経由、ウィーン経由など、いくつもの候補がありますが、2016年4月現在の運行ダイヤでは、大韓航空の仁川経由が便利なようです。
一方、名古屋や大阪から出発するなら、フィンエアのヘルシンキ経由も比較的便利な選択肢となります。
日本からヘルシンキへは、JALが成田から毎日運行(札幌、中部、伊丹、福岡から同日接続可)している他、JALと同じワンワールド・アライアンスのフィンエアが成田の他、名古屋、関西からも直行便を毎日運行、さらに今年5月からは福岡からも週3便体制で運行をはじめるとのことです。フィンエアを利用する場合、名古屋、関西、福岡から直接ヘルシンキに飛んで、ヘルシンキでモスクワ行きへ乗り継げばよいのですが、乗り継ぎ便のダイヤが今一つよくないため、モスクワ到着が現地時間の深夜になってしまうのが難点です。
私も、2014年の暮れに一度だけこのルートを利用したことがあるのですが、そのときは、無理せずヘルシンキに一泊して、翌日モスクワに入ることにしました。
ここでは、そのとき(クリスマスの時期)のヘルシンキの空港や街の雰囲気などを少しだけ紹介したいと思います。
2018年4月現在、ヘルシンキでのロシアへの乗り継ぎダイヤは、以前より便利になっています。成田からのJL413便のヘルシンキ到着が14:50、モスクワ行きのAY713便のヘルシンキ出発が17:40、モスクワ(シェレメチェボ)到着が19:20 なので、乗り継ぎ時間のロスが大幅に改善されました。
サンタの国フィンランドへの出発日12月25日の成田空港出発ゲートでは、JALのスタッフもサンタの装いです。
往路の成田発ヘルシンキ行きJL413便は、11:30に成田を出発し、ヘルシンキ到着が15:00(日本時間の22:00(時差7時間))、およそ10時間半のフライト。
復路のヘルシンキ発成田行きJL414便は、17:15にヘルシンキを出発して、翌朝8:55成田着、およそ8時間40分のフライトです。
フィンエアのハブ、ヘルシンキのバンター国際空港は、ヨーロッパの主要空港の中でも日本から最も近い空港です。2つあるターミナルビルはどちらもコンパクトな設計なので、乗り継ぎの際に迷う心配はありません。国際線から国際線への「最短乗り継ぎ時間(MCT)」は35分とのことです。
ここからヨーロッパ各地に数多くの路線が接続しており、日本からヨーロッパへ向かう際には、最も便利な路線の一つと言えそうです。
セキュリティ・ゲート入口
フィンエア出発カウンター
第2ターミナル 出発フロア
空港から市内へは、フィンエア・シティバス(ヘルシンキ中央駅行き)が、通常20分間隔で運行されているのですが、この日はクリスマス特別ダイヤによる間引き運行だったため、中央駅までタクシーで移動することにしました。クリスマス休暇のため渋滞もなく、空港から中央駅まで30分弱で到着、料金は54ユーロ(2014年12月現在)でした。シティバスなら、運賃はヘルシンキ中央駅まで6.3ユーロなので、少々痛い出費となりました。ドライバーは、「フィンランドは、タクシーは高いからね~!」と笑っていました。
ちなみに、フィンエア・シティバスの運行時刻表はこちら(↓)
◇フィンエア・シティバス運行時刻表
写真は、クリスマスの時期のヘルシンキの街の様子です。撮影した日は、2014年12月25日(到着日の深夜)、26日(早朝)です。
深夜のヘルシンキ中央駅ホーム
深夜のヘルシンキ中央駅ホーム
到着した日の翌朝、厳寒(-20℃)中をホテルから出て、ヘルシンキ中央駅周辺の市街地を歩いてみました。(↓)
ヘルシンキ 鉄道中央駅 入口
フィンランドでは、クリスマスの夜は家族水入らずで過ごす家庭が多いそうです。クリスマスの翌朝の街はとても静かな雰囲気でした。街を彩る美しい装飾は、モスクワの装飾よりもシットリとして落ち着いた印象です。
ヘルシンキ中央駅前のバスターミナル
店内の装飾(12月26日早朝)
店内の装飾(12月26日早朝)
トラムが走るヘルシンキ中央駅前の通り
午前10時頃にホテルをチェックアウトして、すぐ目の前にあるバス乗り場からフィンエア・シティバスでバンター国際空港に向かいました。
バス乗り場で貨物室に乗客のスーツケースを搭載 後ろの建物は、ヘルシンキ中央駅の駅舎
高速道路を一路バンター国際空港へ
空港までの運賃は6.3 EUR およそ30分で到着です。車内ではFree Wi-Fi が使えるので、旅行者にはとても便利です。
第2ターミナル 国際線セキュリティ・ゲート入口
国際線出発エリアのカフェ
沖止めのアエロフロート機(Airbus A319 モスクワ行き)に搭乗
ヘルシンキを離陸後、およそ1時間半でモスクワ(シェレメチェボ空港)に到着 ヘルシンキ-モスクワ間は羽田-福岡間とほぼ等距離です。
シェレメチェボ空港からは、アエロエクスプレスでモスクワ市内へ移動。メトロ(環状線)に接続するベラルーシ駅までノン・ストップ 約35分で到着です。
ヘルシンキ経由で行ってみる(2)へ続く・・・・
次は、モスクワの地下鉄の運賃体系についてです。
運賃は乗車距離に関係なく、乗車1回分ずつ精算されるシステムです。また、乗り換え可能な駅で何度乗り換えても、最終目的駅の出口を出るまでは乗車1回とカウントされます。
乗車券は1回単位(1回券は50ルーブル、2回券は100ルーブル)でも買えますが、接触式の磁気カード型回数券(使い捨て)を購入すると、11回券で360ルーブルでした。(2015年5月)11回券を購入すれば、1回当たりの料金は約33ルーブル(約60円)ですから、相当割安な料金設定といえるでしょう。
駅の ◎のマークがつながっているカ所が乗り換え可能駅です。(↑)
1回券、2回券、5回券、11回券など全てこの使い捨て・厚紙製の磁気カードを使用しています。(↑)
この 磁気カードは地下鉄だけでなく、トラム(路面電車)、トロリーバス、バスとの共通乗車券となっており、モスクワ市内はいずれの交通機関を利用しても、距離に関係なく乗車回数1回単位で精算する、わかりやすくシンプルな料金体系になっています。
券売機で買えるのは1回券と2回券のみで、5回券以上は窓口で買うことになります。
券売機のパネルは英語表示も選択できるのですが、とにかくよく故障しています。全ての券売機が故障していて、乗車券は窓口でしか買えないこともしばしばです。
券売機はロシア語と英語表示を選択できます(前述)が、窓口のお姉さんはロシア語のみです。(笑)(↑)
※ 2016年3月第4週追記:
ところで、今回、あらためてモスクワ市地下鉄公社のオフィシャルサイトを確認したところ、5回券と11回券の表示がなくなっており、回数券は20回券(650ルーブル)、40回券(1300ルーブル)、60回券(1570ルーブル)の3種類だけになっていました。ロシアでは、制度改正が頻繁に行われるので常に注意が必要です。
※ 2017年3月5日追記:
2017年2月にモスクワで地下鉄を利用したみたところ、運賃が1回券55ルーブル、2回券110ルーブルに値上げされていました。同時に、回数券も20回券(720ルーブル)、40回券(1440ルーブル)、60回券(1700ルーブル)にそれぞれ値上げされていました。ロシアでは、公共料金が一度に10%以上値上げされることもめずらしくありません。
※ 2018年3月10日追記:
上記のリンクからモスクワ市地下鉄公社のオフィシャルサイトを確認すると、1回券、2回券の価格は据え置かれていますが、20回券、40回券、60回券は値上げされている他、20回以上乗車する場合は、チャージ式ICカード「トロイカ」を購入することを推奨しています。トロイカカードを利用すると、乗車1回あたり37ルーブルが引き落とされます。(2018年5月)
※ 2019年1月20日追記:
トロイカカード利用時の引き落とし金額が、乗車1回当たり38ルーブルに値上げされました。(2019年1月)
※ 2020年2月追記:
あらためてモスクワ市地下鉄公社のオフィシャルサイトを確認したところ、運賃が1回券57ルーブル、2回券114ルーブルに値上げされていました(2020年2月1日~とのこと)。同時にトロイカカード利用時の引き落とし金額が、乗車1回当たり40ルーブルに値上げされました。(↓)
※ 2021年2月追記:
あらためてモスクワ市地下鉄公社のオフィシャルサイトを確認したところ、運賃が1回券60ルーブル、2回券120ルーブルに値上げされていました(2020年2月1日~とのこと)。同時にトロイカカード利用時の引き落とし金額が、乗車1回当たり42ルーブル (中央ゾーン内の移動)、若しくは50ルーブル(中央と郊外のゾーン間の移動)に値上げされました。(↓)
https://mosmetro.ru/payment/tickets/ediniy
⑦ 駅の構造
続いて、駅の構造について見ていきましょう。
ほとんどの駅は1面2線の島型となっており、上下線の乗降ホームの間に広いコンコースを備えています。境界部には天井を支える太い柱があるため、ホームとコンコースは空間的に分離されています。(↓)
(断面図は、仮屋崎圭司先生の報告論文より引用(一部改変))
列車が到着すると、降車客はホーム上を列車と平行して移動することなく、列車と垂直方向にホームを横断して中央のコンコースへ移動し、コンコースの両端のエスカレーターへ向かって流れていく動線構造になっています。このため、降車した乗客はホームに滞留する乗車客と錯綜することはほとんどなく、円滑な乗降が可能となっています。
また中央コンコースから他の路線へ乗り換える際の通路、階段は一方通行とされ、乗客の錯綜が起こらないように動線が分離されています。
他の路線への連絡通路は基本的に一方通行とされ、通路を歩く乗客の錯綜が生じないように動線が分離されています。
地下深くに位置する駅では、ホームと地上の往来の手段はエスカレーターしかありません。このため、大量の乗客が一度に地下のホームに押し寄せることはなく、改札からホームまではエスカレーターの輸送量に従った定常流になります。ラッシュ時には、改札機やエスカレーターの手前に乗客が滞留することはあっても、ホームやコンコースに滞留することはほとんどありません。これもホームでのスムーズな乗り降りを可能にしている要因と思われます。
右側は出口です。乗車距離に関わらず定額の運賃システムを採用しているため、この駅には出口側の改札機はありません。一方、左側が入口の改札機です。ここでも、乗客の動線は完全に分離されています。
ラッシュ時には、エスカレーターの手前に乗客が滞留し、改札機を超えて駅舎の外側まで行列ができることもありますが、地下のホーム上に乗客があふれることはありません。
モスクワの地下鉄では、時間帯別の高頻度等間隔運行が行われているため、利用者向けの時刻表はありませんが、全ての駅の始発と終発の発車時刻は公表されています。
一方、運転士は列車ごとに作成された運行時刻表に基づいて運転するそうです。この運行時刻表には各駅を発車すべき時刻が5秒単位で記載され、加えて列車の運行間隔も記されています。(↓)
列車ごとの運行時刻表の例(運転間隔は1分35秒と記載されています。)
(仮屋崎圭司先生の報告論文より引用)
運転士は、平常時には運行時刻表記載の出発時刻に駅を発車するよう運転し、遅延が発生した際には、時刻よりも先行列車との運転間隔を優先して運転するのだそうです。このような等間隔運行を支援するため、各駅のホームの先端部にはデジタル時計が設置されています。(↓)
列車の進行方向のホーム先端部にデジタル時計が見えます。
左側は現在時刻、右側は先行列車出発後の経過時間を秒単位で表示しています。運転士は、デジタル時計で現在時刻や先行列車との運転間隔を、左側の大きな鏡でドアばさみなどがないかを確認します。
東京の地下鉄ではダイヤ上、1分程度の停車時間が設定されているのに対して、モスクワの地下鉄の停車時間は30秒以下に設定されています。このため、混んでいる車内では、乗客同士が声を掛け合い、次の駅で降りる客と立ち位置を交換する場面がよく見られます。
私自身も、大きなスーツケースを携えて入口付近に立ったとき、奥の方に移動するように促されたことがありました。
ホーム上での乗客の滞留が起こりにくい駅の構造に加えて、このような乗客同士の協力・コミュニケーションも、地下鉄の高頻度等間隔運行を可能にしている要因の一つのようです。
考えてみると、1分半~2分待てば次の電車が来るのなら、時刻表は必要ないでしょうし、列車の到着を告げるアナウンスも、むしろうるさいだけかもしれません。
高速で動くエスカレーター上を歩く人は多くない(モスクワの地下鉄のエスカレーターでは、空いているときは関西地方と同じく右側立ち)ですし、発車の際、ドアが突然、激しい勢いで閉まるため、駆け込み乗車もほとんど見かけません。
一見、乱暴でアバウトなようにみえますが、実はすべての要素が合理的・調和的に構成されていることに気づかされます。
このように、モスクワの地下鉄は駅のデザインが豪華で美しいだけでなく、低廉な運賃で機能的にも大変優れた市民の足であると感じました。モスクワに行ったら、一度は地下鉄に乗ってみることをお薦めします!
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次に東京の地下鉄とは異なる点を観ていきましょう。
まず、運行時刻表についてですが、各路線の始発と最終電車の発車時刻を除いて利用者向けの運行時刻表は公表されていませんが、主要な路線では、電車は最短で1分30秒間隔で運転されており、駅で長時間待たされることはありません。
※ 2021年2月追記:モスクワの地下鉄の全ての駅の始発、終発時刻は、モスクワ市地下鉄公社のオフィシャルサイトから確認できます。(↓)
また、各駅の乗降ホーム上には乗車位置の表示はなく、電車の到着や発車を知らせるアナウンスもありません。常に案内アナウンスが流れ、発車を知らせるブザーが鳴り響く日本の駅とは異なり、ホームはとても静かです。(↓)
ホーム上に乗車位置の表示はありません。
乗客はホーム上の好きな場所で待ち、列車が到着すると最寄りのドアから素早く乗り込むイメージです。列車は高頻度で運行されており、乗降ドアも多数(最大で列車1編成に4カ所×8両=32カ所)あるので、実用上、時刻表や乗車位置の表示は必要ないということなのでしょう。
発車の際、ドアが閉まることを知らせるアナウンスが流れるのは車内だけで、ホーム側には流れません。しかも、扉は激しい勢いで閉じるので、挟まれるとかなり痛い思いをすることになると思われます。このためか、駆け込み乗車をする乗客はほとんど見かけません。次の電車を待てばよいということなのでしょう。
※ 2017年10月追記:ラッシュ時間帯の駅の混雑
上の3枚の写真ではホーム上に乗客の姿がほとんど見えませんが、これらの写真はいずれもロシアの大型連休中の午前中、電車の発車直後に撮影したためで、平日のラッシュ時には非常に混雑します。(↓)
ラッシュ時間帯の⑤号線 キエフスカヤ駅 ホーム
現在、ほとんどの路線がワンマン運転となっています。車内に掲示されている路線図には英語も併記されていますが、車内の案内アナウンス(録音)はロシア語のみです。
アナウンスは路線によって男性の声、女性の声、だみ声のおじさんバージョンなどいろいろです。(笑)
車内のアナウンスは次のような内容でした。(↓)
ご注意ください! → 「アスタロージュナ!」
扉が閉まります! → 「ドゥヴェーリ ザクリヴァーユッツァ!」
自身の安全のため、このフレーズだけでも覚えておくといいと思います。(笑)
先月(2017年2月)、モスクワで地下鉄⑦号線の電車に乗車したところ、発車の際の上記のアナウンスの後に、"The next station is ○○○○○."と英語のアナウンスが追加されていました。地下鉄の車内で英語のアナウンスに遭遇したのは、初めての経験です。
※ 2020年追記
前回地下鉄に乗車した時に気づいたのですが、席を譲る対象に「妊娠中の女性」が加わっていました。(↓) 車内アナウンスは、
・Уступайте места инвалидам, пожилым людям, пассажирам с детьми и беременным женщинам.
となっていました。
駅のホームやコンコースにある案内表示ボードもほとんどがロシア語表記だけなので、モスクワの地下鉄を利用する時には、ロシア語のアルファベットだけでも読めるようにしておくと何かと便利で安心です。(↓)
《ВЫХОД В ГОРОД》(ヴィハト・ブ・ゴーラト)は、「街への出口」の意味。これは各駅に必ずある表示。「入口」は《ВХОД》(フホート)、
「乗り換え(連絡)通路」は《ПЕРЕХОД》(ピリホート)です。
《К》(ク)、《В》(ヴ)、 《НА》(ナ)は方向(~への)を表す前置詞です。
左側:パベレーツ広場、ノヴォクズネツカヤ通りへ 他
右側:パベレーツ駅、ドモジェドヴォ行きアエロエクスプレスへ
左側:赤の広場、革命広場、マネージ広場へ、トベルスカヤ通り、マホーヴァヤ通りへ、ナショナルホテル、中央電信局、グム百貨店へ 他
右側:劇場広場へ、アホートヌィ・リャト通りへ、ソユーズの家、ツム百貨店へ 他
下(緑):②号線チアトラーリナヤ(劇場)駅への連絡通路
左側:マホーヴァヤ通りへ、⑨号線バラビーツカヤ駅へ
右側:アルバート通り、新アルバート通りへ、①号線レーニン図書館駅、④号線アレクサンドロフスキー庭園駅へ 他
案内板の表示を日本語に置き換えてみました。(↑)
案内板を見るときに、覚えておくと便利なロシア語をいくつか例示すると・・・・、
《СТАНЦИЯ》(スタンツィア)駅
《УЛИЦА》(ウーリッツァ)通り
《ПРОЩАДЬ》(プローシシャチ)広場
上記3語はいずれも女性名詞です。どの前置詞に付くかによって語尾が変化(格変化)するので注意が必要です。
一方、以下の各単語は男性名詞です。
《ГОРОД》(ゴーラト)街
《ВХОД》(フホート)入口
《ВЫХОД》(ヴィハト)出口
《ПЕРЕХОД》(ピリホート)連絡通路
《ВАКЗАЛ》(バグザール)ターミナル駅
《ДОМ》(ドム)家・館
※ 2019年1月追記 :駅の案内表示が全面リニューアル
地下鉄駅の案内表示が全面的にリニューアルされました。ほとんどの駅の案内表示が新しいデザインに統一され、英語表記が併記されるようになりました。(↓)
斬新なデザインに一新され、英語表記が併記されるようになった駅の案内表示
同じ駅名なのに、鉄道のターミナル駅はベラルースキー駅、パベレーツキー駅、一方、地下鉄の駅はベラルースカヤ駅、パベレーツカヤ駅などのように、駅名の語尾が違っています。ロシア語では、修飾される名詞の性によって、修飾する形容詞などの語尾が変化します。
地下鉄の「駅」はロシア語で станция (スタンツィア:女性名詞)です。一方、鉄道の「ターミナル駅」はロシア語で вокзал(バグザール:男性名詞)といいます。このとき、女性名詞を修飾するときの形容詞の語尾は「カヤ」、男性名詞を修飾するときの語尾は「キー」となります。
なので・・・、
地下鉄のベラルーシ駅は станция Белорусская (スタンツィア・ベラルースカヤ)、鉄道のターミナル・ベラルーシ駅は Белорусский вокзал (ベラルースキー・バグザール)となります。
モスクワの地下鉄の駅名に、~カヤとか、~アヤなどの語尾が多いのはこのためです。
この続き、モスクワの地下鉄(3)はこちら(↓)
モスクワ音楽院 留学とは直接は関係のない話題ですが・・・・、ここからは、実用面だけでなく観光スポットとしても有名なモスクワの地下鉄について、3回にわたって少し詳しくみていきましょう。
主な情報ソースは、政策研究大学院大学の仮屋崎圭司先生、日比野直彦先生の報告論文「モスクワ地下鉄の高頻度運行管理 」、モスクワ市地下鉄公社の "Annual report 2012"、モスクワ市地下鉄公社のオフィシャル・サイトやRBTH(Russia Beyond the Headlines)の情報誌「ロシアNow」の特集記事などです。写真は、2015年5月と12月に撮影しました。
上の写真とイラストはモスクワ市地下鉄公社"Annual repotr 2012" から引用させていただきました。
1935年に開業したモスクワの地下鉄のネットワークと輸送力は、東京の地下鉄(東京メトロ+都営線)にほぼ匹敵する世界屈指のレベルなのだそうです。総営業距離は300kmを超え、12の路線に約200の駅を擁しており、現在、一日におよそ700万人が利用しています。(↓)
※ 2017年12月追記:
その後、外環状線などの新線が開通し、現在は14路線となっています。
※ 2021年2月追記:
駅の数も増えて、230となっています。
モスクワ市地下鉄公社のオフィシャル・サイトより(↑)
モスクワの地下鉄の特徴をまとめると次のように表すことができます。(私個人の感想です。)
地上の駅舎や地下のホーム、コンコースは、いずれも大変美しいデザインと装飾が施されており、旅行雑誌などに「地下宮殿」とか「地下の美術館」などと形容されるほどの豪華さを誇っています。以下、代表的な駅舎と地下のコンコース、ホームなどを観ていきましょう!
左側は現在の②号線マヤコフスカヤ駅、右側は第2次大戦中、防空壕として使われていたときの写真です。右側の写真は、ネットから引用させていただきました。
この駅は、モスクワ川の上にかかる橋のように敷設されています。
かつては地下鉄の写真撮影は不可とされていた時代もあったそうですが、現在、写真撮影は許可されており、ホームやコンコースの写真を撮っても、警備している警察官に制止されることはありません。ただし、動画を撮影する場合は、事前に許可を受ける必要があるそうです。
モスクワの地下鉄は地下深くに敷設されており、特にモスクワ川の下を走る中心部の路線では、駅や線路が地上から50m以上の深度に位置する部分も少なくありません。各駅の深度図も公開されています。(↓)
もっとも深い駅「パルク・パビエドゥィ(戦勝公園)」は、地下84mの深度にあり、長さ126mのエスカレーターで地上と結ばれています。地上から地下のホームまで、高速のエスカレーターを数回乗り継いで約3分かかります。(↓)
モスクワのメトロでは、地上と地下深くのホームを結ぶ長いエスカレーターは、日本のエスカレーターの約2倍(60m/分:勾配30°)の高速で運転されています。(↓)
この続き、モスクワの地下鉄(2)はこちら(↓)